不登校の子どもたちに「居場所」と「学び」を──ラクル宗像校の新たな挑戦福岡県宗像市にある「ラクル宗像校」は、もともとパソコンやプログラミング、タイピングなどを学べる地域密着型のパソコンスクールでした。地域の子どもからシニアまで、幅広い年代の方々が通い、スキルアップや趣味の充実に取り組む場として親しまれてきました。そんなラクル宗像校が、2023年末から新たな取り組みを始めました。それが、不登校の子どもたちを対象としたフリースクールの開校です。きっかけは、地域の保護者の方からの相談でした。「子どもが学校に行けなくなった。でも、家にこもっているだけではなく、何かしら学びや外との接点を持たせたい」という声が、徐々に私たちのもとに届くようになったのです。フリースクール設立の背景と想い正直に言えば、当初は戸惑いもありました。パソコンスクールとしての実績はあっても、「不登校支援」という分野は未経験。ですが、目の前に困っている子どもたちや保護者がいるなら、何か力になりたい──その思いがスタッフ一同を突き動かしました。ただ「場所を提供する」だけでなく、「個別にしっかりと向き合える環境を整えよう」と、私たちは現役の大学生を講師として迎えることにしました。年齢が近いことで、子どもたちが心を開きやすくなるのではないかと考えたからです。また、大学生たちは教育・心理・福祉などを学んでいる学生が多く、子どもたちの気持ちに寄り添う姿勢にも安心感があります。一人ひとりに合わせた「個人レッスン」現在、フリースクールでは基本的に「マンツーマン」で授業や対話を行っています。これは学力の補填というより、子ども一人ひとりの気持ちやペースに寄り添うための方法です。朝が苦手な子、話すのが苦手な子、学びに意欲がある子……それぞれの「いまの状態」に応じて、スタッフと大学生講師が一緒にプログラムを考えます。ある日の授業では、中学生の男の子と大学生の講師が、パソコンで自作ゲームをつくっていました。最初は目も合わせず小さな声で話していた彼が、数週間後には「ここはこうしたい」と積極的にアイディアを出すようになり、自分の作品を他の子に見せるまでに変化しました。また、別の高校生は、大学生講師と一緒に英語の勉強を進めながら、自分の進路についても相談しています。「進学したい」という目標ができたことで、自宅では見ることのできなかった笑顔が増えたと、保護者の方からも感謝の言葉をいただきました。「学び」よりもまず「安心できる場」私たちがもっとも大切にしているのは、「学力」よりも「安心できる居場所」であることです。不登校の背景は様々で、学校の雰囲気が合わなかったり、友人関係に悩んでいたり、そもそも外に出ること自体がしんどい子もいます。だからこそ、ラクル宗像校では無理に通わせることはありません。週1回からでも、午後からでも、「今日は来て話すだけでもOK」と、できる限りハードルを下げて関わるようにしています。子どもたちが「ここなら自分を出しても大丈夫」と思えるようになることが第一歩だと考えているからです。スタッフの支えと学び運営側である私たちスタッフにとっても、このフリースクールは「共に学ぶ場」になっています。日々、大学生の講師たちと連携しながら子どもたちの変化を共有し、対応を話し合うなかで、こちらも気づかされることが多くあります。中には、数か月経ってようやく笑顔を見せてくれる子もいます。その笑顔に出会えた時、スタッフ全員で「やってよかったね」と心から思えるのです。もちろん課題も多く、制度や資金面での支援がもっと必要だと感じることもありますが、それでも一人でも多くの子どもたちに「未来につながる小さなきっかけ」を届けられたら──そう思って、私たちはこの場所を育て続けています。最後にラクル宗像校のフリースクールは、まだ始まったばかりの小さな取り組みです。でも、小さな一歩を踏み出す子どもたちの姿を見ていると、私たちの取り組みには確かな意味があると信じています。学校に通うことがすべてではない。その子にとって「合う場所」が見つかれば、それが新たなスタートになります。私たちラクル宗像校は、これからも「その子らしい歩み」をそっと後押ししていきたいと考えています。